『ドラッケンフェルズ』

ジャック・ヨーヴィルことキム・ニューマンの作品及び作風は当然超大作「ドラキュラ紀元」シリーズ等で既に承知していますが(シリーズ中では「ドラキュラ戦記」が特に好き)、彼の世界のイコンたる長命のジュヌビエーヴ・デュドネ女史がこっちの世界でも大活躍!なわけですね。

イギリス発のファンタジーミニチュアゲーム”ウォーハンマー”の独特な世界観も(今回初めて触れる機会を持ちましたが)全体に重厚な印象で好感が持てますが、その設定を生かしつつも、華麗で、陰鬱で、複雑かつ重層的な構造を持つこのような物語を、300pそこそこの尺で組み上げ、整然と配置した上で見事なまでに完成度の高いクライマックス→終焉まで繋いでいったのは、ニューマンの圧倒的な手腕あってのことと思います。これが実質処女長編だったとは!恐るべきはイギリス人のセンスですかね。こういう物語を描かせると、イギリス人には敵わないですねぇ。

…途中で、ある程度物語のカラクリに気づくことができはしたのですが。そもそも冒頭で語られる25年前の真相が明かされないままに現代に突入した辺りが既に怪しいわけで..それにしても恐ろしきは物語の絶対悪たる魔術師ドラッケンフェルズの凄まじい存在感..「紀元」シリーズにおけるドラキュラの存在感も確かに凄い(まあこのお二人はほぼ同等の扱いといってもいいのでしょうね..)!けど、悪魔の権化たる魔術師の行ってきた残虐非道さと、物語の中で示される深謀遠慮には寒気を覚えます。物凄い魅力的で強烈な悪!が存在するからこそ、物語が輝くのですよね..

本作「ドラッケンフェルズ」が最初に邦訳された後、傑作として高い評価を受けつつも一度絶版していたことは把握していました。この度新しい訳で復刊し、手に取ることができた幸運には素直に感謝しています。

訳の出来については「安田均じゃないしー」と正直読む前は結構危ぶんでいたのですが、実際に読み出すと全くもってスムーズな読み心地で..満足です。